los tacos azules は、マルコ・ガルシアが2011年にメキシコ北部のモンテレイで始めたタコス屋です。メキシコの在来種であるブルーコーンから作る出来立てのトルティーヤで作るタコスがコンセプト。トウモロコシが主食のメキシコでも、当時のモンテレイでは在来種のブルーコーン自体を知っている人はほとんどいませんでした。実はメキシコ北部では大量生産の安価なトルティーヤが主流で、レストランや屋台でトルティーヤが注目されることはなく、トルティーヤを極めようという発想はありませんでした。日本に置き換えると、選ばなければコンビニでも普通にお米は手にはいるけど、質の良いお米を丁寧土鍋で炊いてさらに美味しく食べよう、という段階ではなかったのです。
そんな中、トルティーヤにこだわって質の高いタコスを作る los tacos azules はまさに異色の存在。加えて在来種のブルーコーンで作るトルティーヤの色のインパクトと共に大きな衝撃を与えました。開店当初、「こんな色のトルティーヤがあるのか?染めているのか?」とお客様は目が点に。今までと違うトルティーヤを不思議に思われていました。実はメキシコでさえ場所によってはブルーコーンを見たことない人がいます。しかし一度食べてもらえれば、「こんな美味しいトルティーヤは食べたことがない、フワッとモチっと、そして香りが良い」と感動して頂き、その美味しさに同感頂けるようになりました。次第に噂が広まり開店前から列ができる人気店に。自分が目指す美味しいタコスが受け入れてもらえたことで、「質を極めて本当に美味しいものを作れば、本質を理解してもらえるんだ」と創設者のマルコは確信を得ました。タコスは決して従来の安価でジャンクなストリートフードというイメージに固執する必要はないと。どんなものでも極めることができるし、進化することができるのです。
マルコがなぜこれほどトルティーヤにこだわり、タコスの可能性を押し上げようと追求し続けるのか、これは日本への留学と数多くの著書を持つメキシコ料理研究家のダイアナ・ケネディとの交流が大きく影響しています。当時大学の交換留学で日本へ来たマルコは、日本の食文化の豊かさ、食へのこだわり、その品質の高さに衝撃を受けました。特に和食における「素材の味を生かし旬を大事にするアプローチ」に大きく感銘を受け、また他の国の料理がその本国よりも洗練されていることに感動を覚えたそう。そして思案しました、なぜメキシコ料理で日本品質のアプローチができないのか、もっと美味しいメキシコ料理を作れるはずだと。
その思いに突き動かされ、帰国後はメキシコ各地を回り、メキシコの美味しい食材、郷土料理の勉強を始めました。その過程で、メキシコ料理研究の第一人者であるダイアナ・ケネデイと出会い、彼女にトルティーヤの本当の美味しさを教えてもらうことができました。ダイアナ・ケネディの作るトルティーヤは今まで知らなかったトウモロコシの食感、香り、甘さがあり、それはすべて丁寧な調理工程とフレッシュで焼き立て、質の高い在来種のトウモロコシだからできることでした。ダイアナ・ケネディが食べさせてくれたブルートルティーヤを、その美味しさをもっと多くの人に知ってほしいことが los tacos azules の原点です。
そして2018年9月に los tacos azules は東京にお店を構え、第2フェーズの幕があけます。長年温めていた「日本でタコス屋をつくる」というプロジェクトが始動しました。日本の方にも美味しいタコスをぜひ知ってほしいという思いと、「日本でこそ作れる究極のタコス」、「タコスを次のレベルへ」というチャレンジをもって前進していきます。
chef Marco Garcia
メキシコ北部のモンテレイ出身。日本留学を機に食の世界に開眼。和食に限らず、中華、エスニック、フレンチ、パン等あらゆるジャンルの最高峰が楽しめる日本の食文化の高さに感動を覚える。帰国後は日本で体験した味を再現しようと、試行錯誤しながら自学で料理を学んでいく。他国料理を修行しているうちに、次第に自国料理への興味が高まり、メキシコ各地を旅して巡りながら、ローカルの知識をさらに深めていく。そしてメキシコ料理の第一人者であるダイアナ・ケネディ氏との出会いから、古典的手法ニクスタマルから自家製粉して作るトルティーヤの素晴らしさを学ぶ。その時、メキシコ人として大事にするべきことはこのトルティーヤだと認識。こうして自分の足で集めた知見と、日本で得た経験が組み合わさり、Los Tacos Azulesという唯一無二のタコスブランドを作り上げた。日本でのプロジェクトでは、料理だけでなく、器から建築まで一貫したアイディアを持ち、多面的に楽しめるオリジナリティの高いお店を作り上げることができた。